イラン映画
1997年のカンヌで、パルムドールは二本の映画が分け合いました。一本はキアロスタミの『桜桃の味』、もう一本は今村昌平の『うなぎ』です。この地図では、前者はこの帯にあり、後者は右端の日本の水脈にあります。別々に描いてきた二つの流れが、その年、一つのトロフィーの上で交わっていました。キアロスタミの受賞にも、通るか通らないかの瞬間がありました。国内の映画祭に受け入れられなかったことを理由に、文化省の副大臣がカンヌへの送付を止めようとしたのです。カンヌ側が直接働きかけて、土壇場で間に合いました。この帯の映画は、撮れないところから撮り方を見つけてきました。子どもを主人公にする、車の中の会話を固定したカメラで撮る、本人が本人を演じてドキュメンタリーと作りものの境目をあいまいにする——検閲をかわすための工夫だと分析されています(本人がそう明言した証言までは見つけられませんでした)。いちばん切実な形は、2011年に起きました。ジャファル・パナヒは、体制批判を理由に禁固六年と二十年の映画製作禁止を言い渡され、控訴中の身で自宅に軟禁されていました。その部屋で撮った『これは映画ではない』を、彼はフラッシュドライブに入れ、バースデーケーキの中に隠して国外へ送り出します。五月二十日、カンヌで上映されました。この地図には「制約が発明を生む」という線が何本も通っています。撮影所が使えなくて路上に出たネオレアリズモ。機械のサメが壊れてサメを見せないことにしたジョーズ。工期が足りなくてぬいぐるみを選んだ特撮。自分たちに禁止事項を課したドグマ95。そして、ケーキの中のUSB。