ドグマ95
1995年3月13日、映画が生まれて百年を祝う会議の壇上で、ラース・フォン・トリアーが赤いパンフレットを客席にばらまきました。場所はパリのオデオン座です(紙に刷られた日付の場所はコペンハーゲンなので、この地図も最初は発表地を間違えて書きかけました)。中身は「純潔の誓い」と題した十の禁止事項でした。ロケでしか撮らない。その場で鳴っていない音楽を後から足さない。カメラは手持ちだけ。特殊な照明も光学的な効果も使わない。殺人や武器のような表面的な見せ場は入れない。時代や場所を今とここから動かさない。ジャンル映画にしない。そして最後に、監督の名前をクレジットに出さない。作家主義に始まった百年の終わりに、作家の名前を消す誓いが出てきたわけです。この宣言文は、1954年にトリュフォーが書いた論文の体裁を意識して作られたと言われます。型を借りて、中身を逆さまにしたことになります。第一号は1998年の『セレブレーション』でした。この地図には「制約が発明を生む」という線が何本も通っています。撮影所が使えなかったネオレアリズモ。壊れたサメ。間に合わなかった特撮。ケーキに隠されたUSB。そのなかでドグマ95だけは、誰にも強いられていません。自分で自分を縛った、ただ一つの例です。