配給が旗になる
この地図の「作家という旗」の帯は、旗を誰が立てるかの話でできています。一九五一年の作家主義は、監督が旗でした。一九九四年からの現代の作家たちも、名前で観に行く人たちです。二〇一〇年代に起きたのは、その旗が会社の側に移ったことでした。
A24は二〇一二年八月、ニューヨークで生まれました。名前の由来は、創業者のダニエル・カッツがイタリアを旅行中、アウトストラーダA24を運転しながら会社を作ろうと決めたからです。この地図には名前の話がいくつも出てきますが、これはいちばん素っ気ない由来かもしれません。高速道路の番号です。
最初は配給から始まり、やがて自分たちで作るようになりました。『ムーンライト』は、A24がはじめて製作を手がけた作品で、第八十九回アカデミー賞で作品賞・助演男優賞・脚色賞を受けています。二〇二三年には『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が最多七部門。どちらもこの地図では「現代の作家たち」の節に置いてあります。ここで書きたいのは作品のことではなく、観客のほうで起きた変化だからです。
「A24っぽい」という言い方が通じるようになりました。監督の名前を知らなくても、配給の名前で観るものを選ぶ人がいる。これはスタジオシステムの時代のMGMやワーナーが持っていたものと似ていて、しかし中身が逆です。あのころの色は量産の型から生まれましたが、A24の色は、作家に任せた結果の寄せ集めから生まれています。任せる人が旗になる、という、この帯ではじめての形です。